ヒールの折れたシンデレラ
(4)理想の夫婦
今日は休日――千鶴と宗治は二人して高浜夫妻の自宅に招待されていた。
勇矢の妻、恵(めぐみ)が産気づいたときに千鶴が助けたお礼がしたいと自宅に招待してくれたのだ。
迎えに来た宗治の車に乗って、まずは葉山デパートへと向かった。
本当ならば事前に準備しておきたかった出産祝いだったが仕事が忙しく、時間が取れずに今日宗治と一緒に選ぶことになった。
(買い物するならやっぱりここになるんだな)
ラフな格好の宗治に気が付く人はまったくいない。
だけど当の本人は「ここ汚れている」だの「接客の声が小さい」だの「あのディスプレイはいい」だの仕事モードで店内を歩いている。
(本当に葉山の仕事好きなんだな)
そんな態度の宗治を千鶴は一層好ましく思うのだった。
ベビー服売り場に到着して、いろいろと見て回る。
「見てください常務これ――」
振り返ると宗治が眉間にしわを寄せて千鶴をにらむ。
「いつになったら、すんなり名前でよべるようになるの?」
呆れた様子で言われる。
「すみません。宗治……さん」
「ん」
にっこりと笑って千鶴の持っている靴を見る。
いまだにすんなりと宗治の名前が呼べない。
会社ではもちろん『常務』と呼んでいるので何も問題はないのだが、二人の時にどうしても名前が呼べない。なぜだかとても緊張してしまう。
勇矢の妻、恵(めぐみ)が産気づいたときに千鶴が助けたお礼がしたいと自宅に招待してくれたのだ。
迎えに来た宗治の車に乗って、まずは葉山デパートへと向かった。
本当ならば事前に準備しておきたかった出産祝いだったが仕事が忙しく、時間が取れずに今日宗治と一緒に選ぶことになった。
(買い物するならやっぱりここになるんだな)
ラフな格好の宗治に気が付く人はまったくいない。
だけど当の本人は「ここ汚れている」だの「接客の声が小さい」だの「あのディスプレイはいい」だの仕事モードで店内を歩いている。
(本当に葉山の仕事好きなんだな)
そんな態度の宗治を千鶴は一層好ましく思うのだった。
ベビー服売り場に到着して、いろいろと見て回る。
「見てください常務これ――」
振り返ると宗治が眉間にしわを寄せて千鶴をにらむ。
「いつになったら、すんなり名前でよべるようになるの?」
呆れた様子で言われる。
「すみません。宗治……さん」
「ん」
にっこりと笑って千鶴の持っている靴を見る。
いまだにすんなりと宗治の名前が呼べない。
会社ではもちろん『常務』と呼んでいるので何も問題はないのだが、二人の時にどうしても名前が呼べない。なぜだかとても緊張してしまう。