ヒールの折れたシンデレラ
「うまくいってるみたいだな」

勇矢はおだやかな表情で千鶴をみつめる宗治に尋ねる。

キッチンでは千鶴が恵とともに食後の片付けをしていた。

まともに話すのは今日が始めてだろう二人だったが意気投合したのかお互い楽しそうにしていた。

「まぁな。毎日楽しませてくれてる」

口角をきゅっとあげて嬉しそうに笑う顔を勇矢は久しぶりに見た気がした。

「そうか、ならよかった」

勇矢の言葉は少なかったが、長い付き合いの宗治にはそれで十分だった。




「じゃあ遅くまで失礼しました」

玄関で千鶴は恵の焼いた土産のスコーンを大事に抱えて挨拶する。

恵の腕の中でご機嫌の美波にも千鶴は「またね」と声をかける。

その様子をやさしく見守る宗治をみて恵が尋ねる。

「宗次くんも早く千鶴ちゃんとの赤ちゃんほしくなったでしょ？」

恵のその問いかけに、千鶴の顔がみるみる赤く染まる。

そんな様子の千鶴を見て宗治は笑いながら「精進します」と答えて重ねて千鶴を慌てさせた。

和やかに楽しい時間が過ぎていった。
< 118 / 217 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop