ヒールの折れたシンデレラ
(―――集中できない)
ランチ帰りの出来事が千鶴の頭の中を席巻しているせいで、仕事が遅々として進まない。
気分転換にカフェスペースへと逃げ込んだ。
自販機の横に設置されてある椅子に腰かけて気持ちを落ち着ける。
一人でそんなことを考えていると目の前に紙コップに入ったカフェオレがさしだされた。
どうやら千鶴の後を追って艶香もカフェスペースへと来ていたようだ。
千鶴は差し出してくれた甘いカフェオレを飲んだ。
「あのさ、この間私と常務が階段でふたりでいたの見てたよね?」
思い出したくない先日の階段での話をされて驚く。
「はい」
その返事を聞いて艶香は綺麗な口紅は塗られた厚めの唇で弧を描いて笑った。
「あれね、わざとなの」
「わざと?」
「常務からは見えなかったと思うけど私からはあなたが立ってこちらを見ていたのに気が付いていたのよ。だからわざと常務にキスしたの」
「ど、どうしてそんなこと」
思わず声がどもってしまう。
「だって悔しかったんだもん。今まで誰にもなびかなかった常務があとからきた、しかも普通のあなたと仲良くなっていくの」
長い睫を伏せて艶香が話す。
ランチ帰りの出来事が千鶴の頭の中を席巻しているせいで、仕事が遅々として進まない。
気分転換にカフェスペースへと逃げ込んだ。
自販機の横に設置されてある椅子に腰かけて気持ちを落ち着ける。
一人でそんなことを考えていると目の前に紙コップに入ったカフェオレがさしだされた。
どうやら千鶴の後を追って艶香もカフェスペースへと来ていたようだ。
千鶴は差し出してくれた甘いカフェオレを飲んだ。
「あのさ、この間私と常務が階段でふたりでいたの見てたよね?」
思い出したくない先日の階段での話をされて驚く。
「はい」
その返事を聞いて艶香は綺麗な口紅は塗られた厚めの唇で弧を描いて笑った。
「あれね、わざとなの」
「わざと?」
「常務からは見えなかったと思うけど私からはあなたが立ってこちらを見ていたのに気が付いていたのよ。だからわざと常務にキスしたの」
「ど、どうしてそんなこと」
思わず声がどもってしまう。
「だって悔しかったんだもん。今まで誰にもなびかなかった常務があとからきた、しかも普通のあなたと仲良くなっていくの」
長い睫を伏せて艶香が話す。