ヒールの折れたシンデレラ
一人肩を落としていると隣にいた艶香が明るく声をかけてくる。

「何しょげた顔してるの?今度異業種交流会という名のコンパがあるの。人数たりなかったら参加して」

わざとまったく違う会話を振ってきてくれる艶香。

「いや私そういうのは……」

「そう常務よりイイ男うじゃうじゃいるかもよ」

「うじゃうじゃって……」

艶香が追いかけてきてこんな話をしてくれるとは思っていなかった。

千鶴は改めて艶香のことを表面でしか見ていなかったことに気が付く。

「あなたと常務のことはどうなってるかはわからないけどその顔みると、ふふふ……」

意味ありげに艶香に笑われて思わず顔が赤くなる。

「まぁ他人の恋愛なんてどうでもいいけど、せいぜい頑張るのよ」

そう言い残してその場を後にした。

少し落ち着いて。何かあれば宗治は必ず話をしてくれるはずだ。

それぐらいの関係ではあるはず。千鶴は二人の関係を信じていたかった。

千鶴は悪い方向へと考える自分に言い聞かせて、秘書課へと戻る廊下を歩いた。

エレベーターホールに差し掛かったところで宗治と出くわす。
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