ヒールの折れたシンデレラ

(2)聞けない、言えない、離れたくない

千鶴は手の中にあるカフェオレを一口飲んで目の前にいる女性に視線を向けた。

妃奈子と千鶴は駅前の小さな喫茶店に入り向かい合って座っていた。

目の前にはお互いが注文したものがそろった。そろそろ話を始めるタイミングだ。

「いきなり押しかけてすみません。お時間もとらせてしまって……」

妃奈子は綺麗な顔を申し訳なさそうにゆがめる。

千鶴はここまでくる間に色々と覚悟を決めていた。

葉山の人間が千鶴を個人的に訪ねてくるとなるとそれは宗治との関係について何か話をするためだ。それがあまり千鶴にとっていい話だとは思っていない。

続く妃奈子の言葉を覚悟して待つ。

「お願があります。竜くん、宗ちゃんのお兄さんと宗ちゃんを仲直りさせてほしいの」

予想もしていなかった申し出に千鶴はおどろいた。

「仲直りですか?」

そもそも仲違いをしていたのかどうかも千鶴は知らない。

なのにどうやって仲直りなどさせようものか。

「竜くん――竜治さんと宗ちゃんのお母様が違う話はご存知ですよね?」

それは宗治から聞いていたので「はい」と返事をする。

「竜くんはそのことにずっと引け目を感じて過ごしてきていました。だから今も葉山をでて弁護士として働いています」

「それは宗治さんから聞いています」

「竜くんと宗ちゃんの溝はそれだけではないんです。だから今もまったくお互い行き来していない。お母さんは違っても二人、昔はそれなりにうまくやってきていたんです。だから私あのときのように戻ってもらいたくて……」

妃奈子の必死な様子におされながらも千鶴は話を聞いている。
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