ヒールの折れたシンデレラ
「理乃、ごめん私ちょっと仕事を思い出したから戻るね」
ほとんど手をつけてないトレイを持って立ち上がる。
「ちょっと……千鶴……」
そう言って立ち上がりそうになった理乃をおいて千鶴は秘書課へ戻るためにエレベーターに乗った。
十五階で降りて奥にある秘書課に向かう。
(神様!もうこれ以上厄介事がおこりませんように)
心の中で祈りながら秘書課に戻るとそこには、華子、艶香、園美がデスクに座っていた。
室内に電話が鳴り響く。
「あなた」「あんた」「瀬川さん……」
そういって三人とも私の電話を指差していた。
(私が出ろということですよね……ここでは社歴は関係ないのか……)
そんなことを考えながら鳴り続ける電話の受話器を取った。
「葉山ホールディングス秘書課で―――」
「宗治さん出して!」
「あの、常務の葉山でございますか?」
「そうよ、それ以外誰がいるの?」
当たり前のことを聞くなとでも言いたい態度に少し苛立つ。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「クリスタルの彩奈(あやな)よ」
そこでこの不躾な態度に合点がいく。
「こちらではプライベートなお電話をおつなぎできません」
はっきりと言い切る。
「はぁ?アンタ新人なの?私が誰だかわかってる?」
「申し訳ございません。勉強不足で存じ上げません。ずいぶん親密なご関係のようですのでプライベートな番号におかけになってみてはいかがでしょうか、失礼します」
電話口からは相手が何かを話している声が聞こえたが気にせずに受話器をおいた。
常務の女性関係なんて知るわけない。しかも親密な関係ならば直接プライベートな番号にかけるはずだ。
ここにかけてきている時点で常務は彼女との連絡を拒否したことがうかがえる。
ほとんど手をつけてないトレイを持って立ち上がる。
「ちょっと……千鶴……」
そう言って立ち上がりそうになった理乃をおいて千鶴は秘書課へ戻るためにエレベーターに乗った。
十五階で降りて奥にある秘書課に向かう。
(神様!もうこれ以上厄介事がおこりませんように)
心の中で祈りながら秘書課に戻るとそこには、華子、艶香、園美がデスクに座っていた。
室内に電話が鳴り響く。
「あなた」「あんた」「瀬川さん……」
そういって三人とも私の電話を指差していた。
(私が出ろということですよね……ここでは社歴は関係ないのか……)
そんなことを考えながら鳴り続ける電話の受話器を取った。
「葉山ホールディングス秘書課で―――」
「宗治さん出して!」
「あの、常務の葉山でございますか?」
「そうよ、それ以外誰がいるの?」
当たり前のことを聞くなとでも言いたい態度に少し苛立つ。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「クリスタルの彩奈(あやな)よ」
そこでこの不躾な態度に合点がいく。
「こちらではプライベートなお電話をおつなぎできません」
はっきりと言い切る。
「はぁ?アンタ新人なの?私が誰だかわかってる?」
「申し訳ございません。勉強不足で存じ上げません。ずいぶん親密なご関係のようですのでプライベートな番号におかけになってみてはいかがでしょうか、失礼します」
電話口からは相手が何かを話している声が聞こえたが気にせずに受話器をおいた。
常務の女性関係なんて知るわけない。しかも親密な関係ならば直接プライベートな番号にかけるはずだ。
ここにかけてきている時点で常務は彼女との連絡を拒否したことがうかがえる。