ヒールの折れたシンデレラ
「もうっ!朝から何するんですか?」

真っ赤な顔が愛しい。

「何って、いわなきゃわからない?」

からかうように瞳を覗き込むと、唇をとがらせて抗議してくる。

(そんなことしたら余計煽られるだけなのに)

普段しっかりしている千鶴のこういう自分だけに見せる子供っぽい表情や態度が宗治の独占欲を満足させる。

「そんなこと言ってると出張遅れますよ」

急に会社でみせる秘書の顔をした千鶴を残念に思いながらも甘くやわらかい体に手を這わす。

「もう準備してきてるし、優秀な秘書のおかげで俺は行くだけで大丈夫そうだ、だから――」

「だから?」

「まだこうやって一緒にベッドにいる時間は十分ある」

顔を近づけてキスしようとすると、手で阻まれる。

「そんな風にしてると、時間ギリギリになって高浜課長に怒られるんですよ」

キスを阻んだ手で宗治の鼻をつまむ。

「わかったわかった。起きて準備するよ」

起き上がりそこに目に入ったのは、千鶴のカラフルな下着がきれいに干されている。

「次はあれつけてデート希望」

指さしてみていると後ろから目隠しをされた。

「もうっ!変態。今から五分絶対目をあけないで!」

そういってベッドから抜け出し急いで洗濯物を片付ける姿をベッドで横になって眺めた。

穏やかでゆっくり流れる千鶴とのこの時間が脅かされることも知らずに。

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