ヒールの折れたシンデレラ
(いつもならこんなことないのに)

言いたいことははっきり言う性格だと思っていたのに、恋愛となるとうまくいかない。

そんな自分の性格をもどかしく思いながら千鶴は食事を口に運んでいた。

会話が途切れる。千鶴は持っていたフォークを置く。

「宗治さん、私話さないといけないことがある」

千鶴が真剣なまなざしを宗治にむける。

しかし宗治はナイフとフォークを器用に使ってそのまま食事を続ける。

「ねぇ……」

「聞きたくない」

宗治の言葉が千鶴のセリフをさえぎる。

まさかそんな言葉がかえってくるとは思ってもいなかった千鶴は思わず目を見開き言葉に詰まる。

「……ど、どうして」

まるで千鶴が話そうとしている内容を知っているかの態度に千鶴のなけなしの覚悟は今にも崩れ落ちそうだ。

「聞いてしまったら知らないふりができないから」

それはすでに知っているということを意味している。

「でも私は話したい」

「それは千鶴の自己満足だろう。俺は聞きたくない」

かたくなな宗治の態度に千鶴の拒否がうかがえる。
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