ヒールの折れたシンデレラ
床を引きずられたときにブラウスのボタンがはじけ飛ぶ。千鶴は今からもたらされるであろう痛みを耐えようと歯を食いしばったときに、扉が“バンっ”と開いた。

そこに立っていたのは、肩で息をする宗治だった。

「……宗治さんっ!」

千鶴は宗治をみつめたまま動けなくなる。

宗治は千鶴の胸元のボタンが無残にもはじけ飛んでいるのをみて、二人に駆け寄り千鶴を引きはがすと自分の背にかばい、拳を思い切り日下の顔にたたきつけた。

勢いで日下はソファに倒れこむ。

するとそこに、勇矢が涼しい顔をして現れた。

「日下専務。海外へご出立のようですが申し訳ありませんがそれはかないません」

メタルフレームの奥から鋭い視線を日下に向ける。

「は?いったい何を言ってるんだ。君たちこそこんなところでのんびりしていていいのか?今頃会社は取締役のスキャンダルで大騒ぎだろう?」

宗治に殴られた頬をさすりながら立ち上がる。

「えぇ、ほぼすべての社員の知ることとなっております」

「だったら―――」
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