ヒールの折れたシンデレラ
「日下専務の横領と処分が先ほど会長より発表されたところです」

「は、……いったい何いってるんだ、そんな……」

それまで余裕たっぷりの話し方だった日下は明らかに焦りの色を見せた。

「あなたがリークするはずだった資料はここにあります。うちの課の優秀な秘書が私の下に届けてくれました。そしてもう一つ、あなたが横領を繰り返していたという事実がわかる資料です」

勇矢の手から資料をひったくって日下が確認する。

「俺がその程度のことに気が付いてないとでも思ってたのか?」

完全に見下した視線で宗治は日下を見た。

日下は資料をもったまま震えている。

「……そんなバカな。遠山君、彼女は?」

日下は顔をあげて宗治に尋ねる。

「彼女なら今ごろ会長と話をしているところだと思います。あなたのことを洗いざらい全部ね」

「そんな裏切ったのかっ?」

「お前にそんなこと言う権利なんてないんだよ。オッサン」

すると外から足音が聞こえ葉山の警備部の面々が乗り込んできて、日下の身柄を確保した。

顔面蒼白の日下は「そんなバカな……」と一言残してふらふらと立ち上がる。

しかし最後に宗治をにらみ捨てセリフをはく。

「懇意にしている記者に情報をリークしている。そっちはどうやっても止められないだろうな!」

彼らは迅速にその場からニヤニヤと笑う日下を連れ去り、ドアのところで「失礼します」と頭を九十度下げて出ていった。
< 181 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop