ヒールの折れたシンデレラ
部屋に残されたのは、宗治と勇矢そして千鶴だった。

わずかの沈黙の後、宗治の声が部屋に響く。

「この馬鹿！」

そのあまりにも大きな声に、千鶴がビクリと震える。

なにか言わないといけないと思いつつも、声が出ない。

しかし次の瞬間千鶴の体は宗治にぎゅうぎゅうと抱きしめられていた。

それは息をするのも難しいほど強く。

腰に回された右手と千鶴の髪に差し込まれた手が震えているのを感じて、千鶴の瞳からポロリとこらえていた涙が落ちた。

あとからあとから零れ落ちる涙が宗治の高級スーツによって吸い込まれていく。

「どうして一人で行動したんだ。どれだけ危険ぐらいわかるだろう？」

それまで泣いていた千鶴は思い切り宗治の胸を“ドンっ”とたたいた。

「なっ！助けに来たのになんだよっ！」

「助けに来てほしいなんて言っていません。一人でなんとかできました！」

急に怒り始めた千鶴に宗治は驚いた。

だが勇矢はちがった。


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