ヒールの折れたシンデレラ
「だから俺が言っただろう。彼女が追い詰めらえる前にどうにかしろって」

呆れた声で言う。

宗治も二対一では分が悪いと判断したのか千鶴に「遅くなってすまなかった」と謝る。

すると千鶴は一度止めていた涙をまたぽろぽろとこぼした。

「だから、一人で平気だと言ったはずです。それに私と常務はいまだ距離を置いているはずです。近すぎます!離れてください」

泣きながらせめる千鶴に宗治は言い返す。

「あのときはああするのが一番だと思ったんだ。千鶴は単純だからすぐに顔にでるだろう?それに嫌がらせも減ると思って」

心配かけないように相談しなかった嫌がらせも把握済みだったとは千鶴は驚いた。

「でも――」

「はいそこまで―――」

尚も言葉をつづけようとする千鶴に勇矢が止めに入る。

「痴話げんかも結構ですがわれわれは社に戻って日下専務の処分を決める懲罰会議に参加しないといけません。すぐにここをでます」

そういって葉山一優秀な秘書は、話が長引きそうな二人を車にのせてその場を後にした。
< 183 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop