ヒールの折れたシンデレラ
(4)かくれんぼ
千鶴も当然会社に戻るものだと思ったが、到着したのは自分のマンションだった。
「ずいぶん疲れている顔してる。今日はゆっくりお休み」
そう言い残して宗治は会議のために会社にもどった。
置いてけぼり状態の千鶴だったが、思い返せば退職した身だ。
いまさら会社に行っても社員でない千鶴に居場所などない。
マンションの鍵をあけて部屋に入り、そこからぐるっと部屋を見渡す。
目に入ったソファをみてそこに宗治の面影を感じた。
(この部屋で過ごしたの数える程度しかないのに……)
会社を辞めた以上このマンションにもいられない。早く次の部屋をみつけなければ。
日下はマスコミに情報を流したと言っていた。
それが明るみになるとすれば、千鶴は宗治の傍にいるべきではない。
(どこか遠くへ……)
千鶴はふと思い立ち宗治の面影を断ち切るように旅行バックに荷物を詰め始めた。
(今から出れば最終までには着ける)
とりあえず二、三日分の荷物をつめて部屋を後にした。
千鶴が電車とタクシーを乗り継いで目的の場所に到着したときにはすでに日は落ちていた。
タクシーからおりると、空気が澄んでいて星がよく見える。
小さい頃何度か父に連れられて訪れたここは、千鶴の父親のアトリエだった。
別荘地の一角にあり本来は管理人が住んでいたそうだが、管理人の引退とともに空き家になったここを買い上げたものだった。