ヒールの折れたシンデレラ
『どういうことだ?」

少し怒りが混じった声に千鶴の心が痛む。

「一人になって今後のことを考えたいんです」

『それなら一緒に――』

「いいえ、私は会社の重要データに権限もないのに不正にアクセスをしました。退職願いを出しましたが懲戒処分をされても仕方ありません」

電話口からは宗治の声は聞こえない。

「それに私と常務が行動を共にして悪い噂がたってはいけません。さっきも私の自分勝手な行動で迷惑をかけてしまいました」

『あれはお前でなく日下が悪い』

「それでも、もう少し上手にやっていればあんな迷惑をかけることなどなかったのに……それに退職願も出しています。私はすでに葉山とは何の関係もありません」

『葉山と関係がないって俺とも関係ないってこと?』

千鶴もそのつもりで言っていたが実際そう言われると心臓に重い石が投げ込まれたような感覚になる。
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