ヒールの折れたシンデレラ
「だから誰とも真剣に向きあわなかったし、自分ともまともに向き合ってこなかった。

だけど、千鶴がいつもそばにいるようになってもっと近くにいてほしいと思い始めた。

最初は面白半分だったんだけど、ずいぶん色々つらい思いをしているのに、折れない強さとか、でも時々みせる寂しそうな表情とか、全部そばで見ていたいと思ったんだ。

俺は――俺は千鶴のおかげでもう一度人と向き合おうと思ったし、自分とも向き合えたんだ」

千鶴を優しい目で宗治が見つめる。

「変わっていくまわりを責めてばかりの俺に、千鶴は変わることの大切さを教えてくれただろう?」

確かそんな話をした。千鶴は思い出していた。

「そしたらもう気持ちがとまらなくて。俺をこんな風な気持ちに向かわせたのは千鶴だ。だから責任とって結婚してくれ」

「へっ?」

なんだか強引にプロポーズされたようなきがするが気のせいだろうか?

「ここまできて嫌だなんて言わせないから」

そう言ったかと思うと二人の間にあったテーブルを乗り越えて、千鶴の目の前まで宗治が迫ってきていた。
< 209 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop