ヒールの折れたシンデレラ
宗治が特別扱いするので、本命が千鶴だという噂が流れている。それで何も知らない社員たちはこうして千鶴をうやうやしく扱うのだ。
自分が決して宗治と結婚することはないのに、丁寧な扱いをされると申し訳ない気持ちにさいなまれる。
そう考えると足取りと気持ちが重くなり自然と俯きながら正面玄関を目指した。
自動ドアを抜けるとそこにはすでに勇矢の運転する車があり、千鶴の姿を確認すると勇矢が降りて来て後ろのドアを開けてくれた。
(上司にこんなことさせていいのかな?)
急いで車に乗ると、そこにはすでに宗治が長い脚を持て余すように座っていた。
「俺を待たせるなんて、十年早い。そう思わない?ねぇ千鶴ちゃん」
「お待たせして申し訳ありません。ですが、その千鶴ちゃんっていうのやめてください。セクハラで訴えますよ」
「可愛がっている俺の『シンデレラ』を名前で呼ぶのがセクハラになるのか?」
悪びれもしない態度に千鶴は呆れてため息を漏らす。
「だって、常務が名前を呼ぶ度に秘書課の気温が五度ずつ下がっていく気がします」
「そっかー風邪引かないようにしろよ。あははは」
これ以上話をしても無駄だ。いつだって最後には言いくるめられることになるのだから。
自分が決して宗治と結婚することはないのに、丁寧な扱いをされると申し訳ない気持ちにさいなまれる。
そう考えると足取りと気持ちが重くなり自然と俯きながら正面玄関を目指した。
自動ドアを抜けるとそこにはすでに勇矢の運転する車があり、千鶴の姿を確認すると勇矢が降りて来て後ろのドアを開けてくれた。
(上司にこんなことさせていいのかな?)
急いで車に乗ると、そこにはすでに宗治が長い脚を持て余すように座っていた。
「俺を待たせるなんて、十年早い。そう思わない?ねぇ千鶴ちゃん」
「お待たせして申し訳ありません。ですが、その千鶴ちゃんっていうのやめてください。セクハラで訴えますよ」
「可愛がっている俺の『シンデレラ』を名前で呼ぶのがセクハラになるのか?」
悪びれもしない態度に千鶴は呆れてため息を漏らす。
「だって、常務が名前を呼ぶ度に秘書課の気温が五度ずつ下がっていく気がします」
「そっかー風邪引かないようにしろよ。あははは」
これ以上話をしても無駄だ。いつだって最後には言いくるめられることになるのだから。