ヒールの折れたシンデレラ
翌日早めに出社して昨日の残りの仕事を片付けていると、華子が上機嫌で出社してきた。

後から出社してきた園美も「今日はとてもご機嫌ですね」と千鶴にこっそりと耳打ちしてきた。

そのとき廊下で宗治と勇矢の声がした。すると華子がさっと席を立ちフロアに響く声で宗治に話しかける。

「昨夜は色々とありがとうございました。自宅に来ていただけるなんて感激です。父もお話ができてよろこんでいました。次回はぜひお泊りになってくださいね」

そう言いながら宗治の左腕にそっと手を添えた。

華子の目は千鶴に向けるものとは全く違い、喜びできらきらと輝いている。

「昨日はお世話になったね。楽しかったよ」

宗治も人好きのする笑顔で返す。

(昨日、常務は三島さんの家に行ったんだ)

なんとなく気持ちがざわつく。

昨日はひとり残業して必死で仕事を片付けていたからだろうか。

千鶴はそう思って、それ以上華子達の会話を耳にしないように、仕事に集中した。
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