ヒールの折れたシンデレラ
(5)小さな命と重役会議
その日の午後お遣いを済ませて、会社に戻ろうとしていたところ植え込みの陰にうずくまっている女性を見つけた。
何人もの人がその人の前を気がついても声をかけることなく通過している。
千鶴は思わずかけよって覗き込むと、いつからそこにそうしているのか、額には脂汗がにじんでいる。そしてよくみると妊婦さんだ。
「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」
声をかけると首を横に振る。
「あの会社に夫がいるんです。できれば呼んでもらいたいんですけど」
「あの、って葉山でいいんですか?私そこの社員なんです。旦那様の名前が分かれば連絡してみますよ」
そう声をかけると女性はか細い声でいった。
「高浜――常務秘書の高浜をお願いします」
千鶴は驚いた。確かに身重の奥さんがいるとは聞いていたがこんな風に対面することになろうとは。
「私秘書課のものです。すぐに連絡するので頑張ってくださいね」
スマホを取りだして、勇矢にすぐに連絡をする。
最初はいつも通り冷静な声で電話にでた勇矢だったが、千鶴の説明を聞くとすぐに車を回して現場に駆けつけて来た。
「瀬川さん午後から大事な会議があります。常務の事よろしくお願いします」
奥さんを車に乗せながらも仕事の心配をする勇矢にガッツポーズをみせ「まかせてください」と笑顔を見せた。
何人もの人がその人の前を気がついても声をかけることなく通過している。
千鶴は思わずかけよって覗き込むと、いつからそこにそうしているのか、額には脂汗がにじんでいる。そしてよくみると妊婦さんだ。
「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」
声をかけると首を横に振る。
「あの会社に夫がいるんです。できれば呼んでもらいたいんですけど」
「あの、って葉山でいいんですか?私そこの社員なんです。旦那様の名前が分かれば連絡してみますよ」
そう声をかけると女性はか細い声でいった。
「高浜――常務秘書の高浜をお願いします」
千鶴は驚いた。確かに身重の奥さんがいるとは聞いていたがこんな風に対面することになろうとは。
「私秘書課のものです。すぐに連絡するので頑張ってくださいね」
スマホを取りだして、勇矢にすぐに連絡をする。
最初はいつも通り冷静な声で電話にでた勇矢だったが、千鶴の説明を聞くとすぐに車を回して現場に駆けつけて来た。
「瀬川さん午後から大事な会議があります。常務の事よろしくお願いします」
奥さんを車に乗せながらも仕事の心配をする勇矢にガッツポーズをみせ「まかせてください」と笑顔を見せた。