ヒールの折れたシンデレラ
重役会議は二十階の会議室で行われている。

千鶴にとっては今日が初めての会議だったが、貴重な経験と思い集中していた。

会長の和子は実務から退いてはいるものの、この会議には参加していて終始だまったまま議論を眺めていた。

会議中の宗治は普段の軽い雰囲気を感じさせずに、議論の中心にいる。よどみなく、力強く話をする姿に思わず引きつけられる。

しかし途中専務の日下（くさか）によって議論が中断されることになる。

「この資料では説得力に欠ける。この程度でこの場に臨まれては困るんだ」

強い口調に驚くが、ぼっとしてはいられない。

今話しているところの関連の資料を確か勇矢がまとめていた気がする。

次回の会議に使うと言っていたはずだ。

分厚いファイルから、それを取りだす。

そして宗治が操作しているパワーポイントにもプレゼン用のデータがすでに入っているはずだ。

そっと背後から資料を渡しその旨を宗治に伝える。

すると素早く受け取って、説明を始めた。

（どうやらうまくいったみたい）

一安心して自分の椅子に座りもう一度会議に集中した。

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