ヒールの折れたシンデレラ
しかし、そこに電話を終えたムバラックが戻ってきてしまった。

まだテーブルの上にはムバラックが食べられない黒豚がのったままだ。

本来気難しいと聞いているムバラックがこの状況をどう感じるだろうか。

せっかく今まで良好な関係を気付いてきたのに、ここで気分を害してはこれからの仕事に差し支える。

千鶴は意を決して、テーブルの上のグラスを倒した。

「きゃ~すみません。急いでテーブルセッティングし直してもらいます。あちらのソファにかけてお待ちください」

宗治にムバラックを任せて、勇矢とともに店側にすべてのメニューの確認をとった。

NG食材を使っていたのは、この料理だけだったので、すぐに変更してもらうように依頼して個室に戻る。

ソファではムバラックと宗治が談笑していた。その光景に千鶴が安心していると、ムバラックから声がかかる。

「チヅルさ~ん、は『ソソッカシー』ですねぇ~」

「はい、本当に申し訳ございません。お詫びとしてこの後いいところにお連れしますね」

千鶴の発言に宗治と勇矢は怪訝そうな顔をする。

「それは、とてもたのしみデス」

「きっと満足してもらえると思いますよ」

千鶴はにっこりとほほ笑み、セッティングし直したテーブルにムバラックを再度案内した。


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