ヒールの折れたシンデレラ
残された千鶴は近くのベンチに腰掛ける。
何気なく見上げた夜空には思っていたよりもたくさんの星が輝いている。
すると急に頬に冷たい何かがふれて驚く。
「冷たっ!」
慌てて振り向くとペットボトルのお茶を手にした宗治が立っていた。
「驚いた?」
いたずらが成功して喜んでいるのか笑いを含んだ顔でこちらを見ている。
「驚きましたよ。もう子供みたいなことやめてください」
お茶を受け取りながら軽く睨む。
隣に腰を下ろした宗治はペットボトルのお茶をぐびぐびと煽る。
千鶴もペットボトルのふたをあけて、ごくりと冷たいお茶を飲んだ。
「あ~久々に動いた。やっぱ気持ちいいな」
そんな風に言いながら、コートに転がるバスケットボールを見つめている。
「女の子と遊んでばかりいないで、こうやって体動かしたらいいんですよ」
嫌味を言う千鶴に「それとこれとは、話が別」と笑いながら答える。
「どうして常務は結婚しないんですか?」
初日に言われて気になっていたことを思いきって聞いてみた。
千鶴からみれば、宗治は女性関係を除いては人間としても尊敬できる相手だった。
仕事はまじめで、朝早くから夜遅くまで忙しそうに働いているし、部下への指導の仕方も厳しすぎず、かといって甘やかすわけでもなくちょうどいい塩梅で目標をさりげなく与えて伸ばす。
目上の者への態度も次期後継者としておごることもなく尊敬の意を態度で十分に表している。
そんな彼が将来を共にするパートナーを“いらない”とする理由が聞きたかった。
「……一言では言えないかな。でも俺は相手を裏切りたくないし、裏切られたくない。ただ臆病なだけだろうけど」
ボールに視線を置いたまま話す宗治を横から見つめる。どこかさみしそうな瞳になぜだか千鶴の胸は締め付けられた。
何気なく見上げた夜空には思っていたよりもたくさんの星が輝いている。
すると急に頬に冷たい何かがふれて驚く。
「冷たっ!」
慌てて振り向くとペットボトルのお茶を手にした宗治が立っていた。
「驚いた?」
いたずらが成功して喜んでいるのか笑いを含んだ顔でこちらを見ている。
「驚きましたよ。もう子供みたいなことやめてください」
お茶を受け取りながら軽く睨む。
隣に腰を下ろした宗治はペットボトルのお茶をぐびぐびと煽る。
千鶴もペットボトルのふたをあけて、ごくりと冷たいお茶を飲んだ。
「あ~久々に動いた。やっぱ気持ちいいな」
そんな風に言いながら、コートに転がるバスケットボールを見つめている。
「女の子と遊んでばかりいないで、こうやって体動かしたらいいんですよ」
嫌味を言う千鶴に「それとこれとは、話が別」と笑いながら答える。
「どうして常務は結婚しないんですか?」
初日に言われて気になっていたことを思いきって聞いてみた。
千鶴からみれば、宗治は女性関係を除いては人間としても尊敬できる相手だった。
仕事はまじめで、朝早くから夜遅くまで忙しそうに働いているし、部下への指導の仕方も厳しすぎず、かといって甘やかすわけでもなくちょうどいい塩梅で目標をさりげなく与えて伸ばす。
目上の者への態度も次期後継者としておごることもなく尊敬の意を態度で十分に表している。
そんな彼が将来を共にするパートナーを“いらない”とする理由が聞きたかった。
「……一言では言えないかな。でも俺は相手を裏切りたくないし、裏切られたくない。ただ臆病なだけだろうけど」
ボールに視線を置いたまま話す宗治を横から見つめる。どこかさみしそうな瞳になぜだか千鶴の胸は締め付けられた。