ヒールの折れたシンデレラ
空車のタクシーを捕まえて、先に乗せられる。
まだ終電に間に合う時間だから電車で帰ると伝えたが、宗治が送るといって聞かず千鶴は仕方なく宗治とともにタクシーに乗った。
マンションの住所を告げるとタクシーは走り出す。宗治は狭いタクシーの中、足の置場をさぐりながら鼻歌で洋楽を口ずさんでいた。
しばらく「何の歌だったっけ?」と考え込んでいると、歌が止まり代わりにゆっくり千鶴の肩に重みがかかる。
ふと顔を覗き込んでみると、目を閉じていて、長い睫の影が窓から入ってくるネオンの明かりでできていた。
「常務?」
そう声をかけるが、少し身じろぎするだけで一向に起きない。
もうすぐ千鶴のマンションに到着する。
こんな状態で千鶴が降りた後自宅住所を運転士さんに伝えることができるだろうか?
千鶴の心配をよそに、宗治は気持ちよさそうに眠っている。
次の角を曲がれば千鶴のマンションだ。なんとか起こそうと呼び掛けてみても「うん」と返事はあるが、肝心の住所をきくと「あっち」としか答えない。
まだ終電に間に合う時間だから電車で帰ると伝えたが、宗治が送るといって聞かず千鶴は仕方なく宗治とともにタクシーに乗った。
マンションの住所を告げるとタクシーは走り出す。宗治は狭いタクシーの中、足の置場をさぐりながら鼻歌で洋楽を口ずさんでいた。
しばらく「何の歌だったっけ?」と考え込んでいると、歌が止まり代わりにゆっくり千鶴の肩に重みがかかる。
ふと顔を覗き込んでみると、目を閉じていて、長い睫の影が窓から入ってくるネオンの明かりでできていた。
「常務?」
そう声をかけるが、少し身じろぎするだけで一向に起きない。
もうすぐ千鶴のマンションに到着する。
こんな状態で千鶴が降りた後自宅住所を運転士さんに伝えることができるだろうか?
千鶴の心配をよそに、宗治は気持ちよさそうに眠っている。
次の角を曲がれば千鶴のマンションだ。なんとか起こそうと呼び掛けてみても「うん」と返事はあるが、肝心の住所をきくと「あっち」としか答えない。