ヒールの折れたシンデレラ
その様子に気が付いた宗治がシャンパンの入ったグラスを千鶴に差し出す。

「今度はちゃんと口で飲んで」

「好きでかぶったんじゃないのに……」

言い方はいじわるだが、その気遣いに千鶴の顔がほころぶ。

(いつもこうやってさりげなく優しい……)

プレイボーイでなんだか偉そう(実際偉いのだけど)なイメージを抱いていた千鶴は、宗治と接するたびにそのイメージを覆されてきた。

さりげない気遣いや、意外にアルコールに弱いことや、笑い上戸でだけど仕事の時は真剣で。

次はどんな顔をみせてくれるのか、宗治についてもっと知りたいと思っている自分に少し戸惑っていた。

宗治の顔をじっと見つめてしまっていた自分に気が付き慌てて顔をそらす。

そんな千鶴の態度を不思議そうにしながら、挨拶回りを二人は再開した。

すると二人の前から不機嫌をまとった男性がこちらに近づいてきた。

「いやぁ、宗治君忙しそうだね」

「三島社長。ご無沙汰しております」

(三島っていうことは華子さんのお父様)

宗治に合わせて千鶴も会釈をする。

「今日はまた違う子を伴ってるようだね。うちの華子もさみしがっているようだからたまには相手してやってよ」

視線は千鶴を品定めするように、上から下まで見ている。

その態度に気が付いたのか宗治がそっと千鶴を自分の後ろへとかばう。

「華子さんにはよくしてもらっています。今日も秘書課の一員として頑張ってくれていますよ」

秘書課のというところを強調する。
< 59 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop