ヒールの折れたシンデレラ
「経理課で資料をもらってきます」
エレベーターの扉が開いて乗り込もうとすると、会議が終了してすぐだったのか満員だった。
それを見送り階段で五階まで向かう。
途中八階にさしかかったところで、次のエレベーターを待てばよかったと後悔していると、背後に人の気配を感じた。
振り返ろうとしたその時―――
“トンっ”と背中を押された。
自分の目の前にさっきまで手元にあった紙が舞い散る。
(落ちるっ!)
そう思ったときはすでに千鶴は階段の踊り場まで転げおちていた。
意識が薄れていく中で、聞こえたのは遠ざかるヒールの音。それだけだった。
次に目を覚ました時に目に入ってきたのは、白い天井と心配そうにのぞき込む理乃の顔だった。
「気が付いた?先生呼んでくるね」
千鶴の返事を待たずに理乃は部屋から出ていき隣の医務室の医師を呼びに行った。
起き上がろうとするとふらっとする。もう少し休んでから念のためCTをとるように言われた。秘書課へは医師より連絡がいくようになっている。
ベッドに横になると理乃が心配そうにのぞき込んでくる。秘書課に連絡がいったのか勇矢の姿もあった。
「千鶴、違ってたらごめんね。これって誰かに何かされた?」
確かに背中を押された。もしあたっただけなら千鶴の状況をみてすぐに医務室へと連絡してくれただろう。
しかし千鶴を発見したのは理乃だった。
訪ねてくるはずの千鶴がいつまでたっても来ないので探しに来て倒れていた千鶴を発見した。
千鶴は首を振って否定する。もし事実を伝えたら事態が大きくなるからだ。
エレベーターの扉が開いて乗り込もうとすると、会議が終了してすぐだったのか満員だった。
それを見送り階段で五階まで向かう。
途中八階にさしかかったところで、次のエレベーターを待てばよかったと後悔していると、背後に人の気配を感じた。
振り返ろうとしたその時―――
“トンっ”と背中を押された。
自分の目の前にさっきまで手元にあった紙が舞い散る。
(落ちるっ!)
そう思ったときはすでに千鶴は階段の踊り場まで転げおちていた。
意識が薄れていく中で、聞こえたのは遠ざかるヒールの音。それだけだった。
次に目を覚ました時に目に入ってきたのは、白い天井と心配そうにのぞき込む理乃の顔だった。
「気が付いた?先生呼んでくるね」
千鶴の返事を待たずに理乃は部屋から出ていき隣の医務室の医師を呼びに行った。
起き上がろうとするとふらっとする。もう少し休んでから念のためCTをとるように言われた。秘書課へは医師より連絡がいくようになっている。
ベッドに横になると理乃が心配そうにのぞき込んでくる。秘書課に連絡がいったのか勇矢の姿もあった。
「千鶴、違ってたらごめんね。これって誰かに何かされた?」
確かに背中を押された。もしあたっただけなら千鶴の状況をみてすぐに医務室へと連絡してくれただろう。
しかし千鶴を発見したのは理乃だった。
訪ねてくるはずの千鶴がいつまでたっても来ないので探しに来て倒れていた千鶴を発見した。
千鶴は首を振って否定する。もし事実を伝えたら事態が大きくなるからだ。