ヒールの折れたシンデレラ
「それは、好きな人と一緒にいたいとか」

「結婚しなくても出来る」

「子孫を残したいとか」

「それも別に結婚しなくても可能だ」

言葉が続かない千鶴に宗治がたたみかける。

「そもそも、変わらない思いなんてないんだよ。好きな相手でもいつか憎しみに変わることだってある」

「でも、憎しみに変わることもあれば、愛しさに変わることだってあるでしょ?確かに人の気持ちは変わっていくものです。けれど決して悪いほうだけに変わるわけじゃないです。いいほうにだって二人の関係でいくらでも変わります」

一気に話した千鶴はコーヒーを一口飲んで気持ちを落ち着かせる。


「お互い変わり続けることが結婚じゃないんですか?お互い今よりも良いようにかわれるから二人でいる意味があるんじゃないでしょうか?」

少し言い過ぎたかもしれない。

千鶴がそう思いうかがうように宗治を見ると、きれいな目を大きく開いていて、しばらくしてそれがゆっくりと弧を描いた。

「そうか、変わり続けるね……」

そういうとゆっくりとコーヒーカップを持ち上げて一気に飲み干した。

「言い過ぎました、すみません」

謝る千鶴に「いや、大変興味深い」と意味ありげにほほ笑んだ。
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