ヒールの折れたシンデレラ
「常務と食事に行かれるんですよね」
「……え、どうしてそれを?」
「常務と課長が話しているのを聞いたんです」
どこかで話をしていたのを聞いたようだ。
「そうなの。だから今日は仕事早く終わらせないと叱られちゃう」
自分の浮いた気持ちがばれないようにする。
「それ、代わってもらったらダメですか?」
大きな瞳をまっすぐに千鶴にむけて園美が言う。
「え、でも」
「私常務のこと真剣なんです。華子さんや艶香さんほど実家は力をいれてないですけど、私自身が常務の近くにいたいと思うんです」
今まで聞いたことなかった園美の真剣な気持ちを聞いて千鶴は驚く。
普段はこんな風に自分の気持ちを出すタイプではない。
その園美が真剣に宗治への気持ちを千鶴にぶつけてきたのだ。無視できるはずなどない。
しかも園美は“葉山”が決めた婚約者候補だ。
“宗治にとってふさわしい相手”なのだ。
それを邪魔する資格は千鶴にはない。
そして和子との約束も頭によぎる。
「いいよ。うまくいくといいね」
園美はぱあっと明るく笑う。
「ありがとうございます!私頑張ります」
園美は飛び跳ねるように給湯室から駆け出た。
それに対して千鶴はなんとかその場をやり過ごすだけだ。
(私が常務と食事したところで何も生まれないんだから、これでいい)
先ほどとはうってかわって重い足取りで自分のデスクへと戻った。
「……え、どうしてそれを?」
「常務と課長が話しているのを聞いたんです」
どこかで話をしていたのを聞いたようだ。
「そうなの。だから今日は仕事早く終わらせないと叱られちゃう」
自分の浮いた気持ちがばれないようにする。
「それ、代わってもらったらダメですか?」
大きな瞳をまっすぐに千鶴にむけて園美が言う。
「え、でも」
「私常務のこと真剣なんです。華子さんや艶香さんほど実家は力をいれてないですけど、私自身が常務の近くにいたいと思うんです」
今まで聞いたことなかった園美の真剣な気持ちを聞いて千鶴は驚く。
普段はこんな風に自分の気持ちを出すタイプではない。
その園美が真剣に宗治への気持ちを千鶴にぶつけてきたのだ。無視できるはずなどない。
しかも園美は“葉山”が決めた婚約者候補だ。
“宗治にとってふさわしい相手”なのだ。
それを邪魔する資格は千鶴にはない。
そして和子との約束も頭によぎる。
「いいよ。うまくいくといいね」
園美はぱあっと明るく笑う。
「ありがとうございます!私頑張ります」
園美は飛び跳ねるように給湯室から駆け出た。
それに対して千鶴はなんとかその場をやり過ごすだけだ。
(私が常務と食事したところで何も生まれないんだから、これでいい)
先ほどとはうってかわって重い足取りで自分のデスクへと戻った。