ヒールの折れたシンデレラ
がやがやとざわつく居酒屋の音がやけに耳に響く。
このテーブルだけ誰も言葉を発していない。
最初に沈黙をやぶったのは理乃だった。
「私もう帰るね。今日は千鶴のおごりで」
そういうと、バッグを持ってそそくさと座敷から降りて靴を履きはじめる。
「失礼します」
そう宗治に挨拶をした理乃に宗治は「あぁ」とだけ答えた。
残された二人の間に沈黙がおとされていた。
千鶴は座ったまま宗治の顔を見上げるとあきらかに不機嫌な表情をしていて、出かかっていた声が出ない。
それでも一度飲み込んだ言葉を紡ぐ。
「常務、どうしてここへ?」
「それは俺のセリフだ。君こそどうしてこんなところにいる?俺との約束の場所はここじゃなかったはずだ。ん?」
最後の「ん?」の時に右の眉がくいっと上がる。
これは千鶴も知っている、宗治の機嫌がMAXで悪いことを表している。
「……す、みません」
小さな声で謝ると、きれいなスーツの手がすっと伸びてテーブルの上の伝票を持つ。
「あ、それ」
千鶴が立ち上がろうとしたときにはすでに宗治がレジに向かっているところで、急いで靴を履き追いついたときには、店員の「ありがとうございました」の声が響いていた。
このテーブルだけ誰も言葉を発していない。
最初に沈黙をやぶったのは理乃だった。
「私もう帰るね。今日は千鶴のおごりで」
そういうと、バッグを持ってそそくさと座敷から降りて靴を履きはじめる。
「失礼します」
そう宗治に挨拶をした理乃に宗治は「あぁ」とだけ答えた。
残された二人の間に沈黙がおとされていた。
千鶴は座ったまま宗治の顔を見上げるとあきらかに不機嫌な表情をしていて、出かかっていた声が出ない。
それでも一度飲み込んだ言葉を紡ぐ。
「常務、どうしてここへ?」
「それは俺のセリフだ。君こそどうしてこんなところにいる?俺との約束の場所はここじゃなかったはずだ。ん?」
最後の「ん?」の時に右の眉がくいっと上がる。
これは千鶴も知っている、宗治の機嫌がMAXで悪いことを表している。
「……す、みません」
小さな声で謝ると、きれいなスーツの手がすっと伸びてテーブルの上の伝票を持つ。
「あ、それ」
千鶴が立ち上がろうとしたときにはすでに宗治がレジに向かっているところで、急いで靴を履き追いついたときには、店員の「ありがとうございました」の声が響いていた。