ノーチェ
その後、急いで追い掛けたけれど
クリスマスの人混みの中に紛れた彼を見つける事は出来なかった。
あたしは願った。
花屋を出て、噴水のある大広場でそびえ立つツリーを見上げて。
――もう一度、彼に会いたい、と。
それから名刺に書かれた携帯番号に電話をしたのは
年が明けた、一月の事。
例え、あたしのこの想いが罪だとしても
…もう、止められなかった。
「好き、なんです。」
その凛とした横顔も
少し低い、その声も
あなたの全てが。
あたしを突き動かすんだから。
そう。
これが罪だとしても、世間から何て言われようとも
彼に抱かれたら、全ては夜に消える。
夜に、罪も溶けてゆく。
だから、あたしは夜が好きなんだ。
全てを隠す、この夜が。