ノーチェ


おぼんを持つ手につい力が入る。

…寝てる、かな。



しんと静まった薫の部屋からは物音一つしない。

深く息を吸い込み、意を決し、おぼんを片手で腕と支えるように持つと、あたしは控え目に扉をノックした。



コンコン。

「…薫?お粥、持って来たよ。」


緊張のせいか、声が少し震えてしまった。


だけど扉の向こうから返事はない。



……寝てる、か。


人知れず緊張が溶けたあたしは扉に手を掛けて

「薫?入るよ?」

そのまま部屋に入った。



「…薫?」

真っ暗な部屋は、遮光カーテンなのか月明りさえ入らず、そこに闇を漂わせる。


恐る恐る足を踏み入れたものの、暗闇に目が慣れなくて何がどこにある、とか全くわからなかった。

とりあえず、つまづかないように慎重に足を進めるあたし。



そんな時だった。




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