ノーチェ
「はい、冷えピタ。」
そう言って渡すと、おでこを出して
「…貼って。」
と薫がこちらに向いた。
「…じゃあ仰向けになって。」
「わりぃ…。」
のそのそと力なく動いた薫の表情は、いつもの強気な彼じゃなくて。
いつもはきっちりセットされてる髪型も無造作におろされている。
何だか、子供みたい。
「何だよ…。」
ふふ、と笑いをこぼしたあたしに薫が怪訝そうに方眉を上げた。
「んーん。何でもない。」
「何だよ、気になるだろーが。」
「んもぅ、貼るから大人しくしてよ!」
んだよ、と舌打ちして渋々前髪を押さえた薫のおでこに、思い切り冷えピタを貼る。
「って!もう少し優しく貼れよ!」
「うるさいなぁ。一応、病人なんだから静かにしてなよ。」