ノーチェ
…揺れる、唇
……………
夏に近付くにつれて
太陽は容赦なくアスファルトを照らす。
遠くの道路でゆらゆら陽炎が揺れて、全てを歪んで映した。
交差する気持ちが、一本に繋がるのはもう、間近だったのかもしれない。
「海行きたーい!」
「…菜月、うるさい。」
ガランとした店先に
あたしと菜月は花の手入れをする。
枯れた花びらを摘みながら、小さく溜め息をついた。
「…海行きたーい。」
8月まであと少し。
…夏って、どうしてこうもうざったいんだろ。
紫外線も、肌につく汗も心底うんざりする。
この辺の海は濁ってるしベタベタするし、後々面倒じゃん。
そう思いながら背後で
『海、海』と騒ぐ菜月を尻目にあたしはせっせと仕事に励む。