ノーチェ

…揺れる、瞼




………………


「え?あたしも?」

「…あぁ。何か予定ある?」


8月の中盤。
夏真っ盛りの太陽はどっぷりと沈んで蝉の鳴き声も少しだけ収まった夜の仕事帰り。



珍しく薫がうちの花屋まで来ると言うから
何事かと思ったら

「百合子が是非お前にも来て欲しいって。」

と、塚本家の食事会に誘われたあたし。



隣で薫のウォレットチェーンが音を立てる。


「っても、そんな大袈裟なもんじゃねぇから。」

「あたしなんかが行って平気なの?」

「百合子が言ったんだしいいんじゃね?」


今日も破けたジーパンにドクロが描かれたTシャツ姿の薫は
以前よりも伸びた髪をツンツンに上げて悠々と歩く。


どこに居ても目立つ薫は長い腕を揺らしながら
脇に置いてあったバイクに手を掛けた。



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