ノーチェ
決して繁盛してる訳じゃないこのラーメン屋に
あの塚本総合病院の息子が居るなんて
何だかとても不思議だ。
出会った時からそうだけれど、薫はあの家に生まれた事を鼻にかけたりしない。
むしろ、考え方とか生き方はあたし達と同じ気がする。
だからかな。
未だに、薫が塚本総合病院の息子だとは思えなかった。
「莉伊?」
「……え?」
ぼけっとしてたあたしにすっかり間食した薫は、つまようじをくわえながら不思議そうに覗き込んだ。
「のびるぞ?早く食え。」
「あ、うん。」
慌てて口にすると、薫の言う通りラーメンはのびていて。
とても食べれたもんじゃなかった。
「ねぇ、」
と、水を飲んだあたしはつまようじの代わりに煙草をくわえた薫に話を掛けた。