ノーチェ
……………
「乾杯ーっっ!」
掛け声と共に、お互いのグラスを鳴らして
疲れた体にビールを注ぎ込む。
カチン、と鳴るグラスと冷たいビールの喉ごしが夏の訪れを感じさせた。
「じゃあ、とりあえず自己紹介でもしようか!」
トン、と一番最初にジョッキを置いた端に座る男が突然仕切り始める。
多分、彼がこの合コンの幹事なのだろう。
笑顔を見せる菜月を横目にあたしは気にせずビールをひたすら喉に注ぎ込んだ。
メンバーは男三人に、菜月と後輩とあたし。
結局、菜月の半ば強制的な誘いを断り切れず、あたしはこの場に混じっている。
だけど正直、乗り気じゃないのは菜月もわかってると思う。
だからこそ、ひたすら場を盛り上げようとする幹事の男に
哀れみとも取れる視線を投げながら、それぞれの自己紹介を聞き流していた。