ノーチェ
宴も中盤に差し掛かるとすっかり酒に飲まれた菜月は、普段以上にお喋りになる。
「え~じゃあー、雅哉くんは直社長なんだぁ。」
甘い声で、誘うように目の前の男に上目遣いを投げる。
これで騙された男は何人居るんだろう、なんてアルコールの利いた頭で考えた。
多分、クリスマスの時に付き合ってた彼もそうなんだろうと思うと少しだけ同情する。
「ねぇ、莉伊ちゃんは何歳なの?」
「え?」
先程まで菜月と話していた男は突然、あたしに話を振ってきた。
それと同時に、いつ名乗ったっけ?と冷静な頭で考えるあたし。
「あ、あたしは…。」
「莉伊は22歳だってばぁ!あたしと一緒って言ったでしょぉ!」
口ごもるあたしの代わりに菜月が答える。
そんな時
どこからか振動が伝わってきてあたしの意識がカバンの中の携帯へと向いた。