ノーチェ
そんな事言われても…。
着慣れないワンピースがあたしをぎこちなくさせる。
「塚本様、お待ちしておりました。」
とタキシードに身を包んだ店員が深々と頭を下げて、薫とあたしを席まで案内してくれた。
「薫、莉伊ちゃん。」
個室になったその席は
窓から見えるオーシャンビューと夜景が
場違いなあたしに眩しく映る。
「旦那は?」
「まだよ。もう少ししたら来るわ。」
先に待っていた百合子さんは、気品ある白のロングドレスがよく似合ってた。
目が合って慌ててペコリと一礼すると
「来て下さってありがとう。」
と、アップにした黒髪をふわりと揺らして笑った百合子さん。
…やっぱり、綺麗な人だと思った。