ノーチェ
「お袋は?」
百合子さんを前に、隣に座ったあたしと薫。
「…今日は来られないって。」
「そ。」
え?
じゃあ、あたしと薫、百合子さんと旦那さんだけって事?
二人の会話を聞いて心の中で疑問を抱く。
すると隣から、カチっとライターの音が聞こえて視線を向けると
「薫、ここは禁煙よ?」
そう言った百合子さんが困ったように眉を下げた。
「いいじゃん、禁煙なんて聞いてねぇし。」
「もう…。すみません、灰皿とかあります?」
観念したように、店員を呼び付けた百合子さんは慣れた様子で灰皿を持ってきて、と指示をする。
普段は禁煙なんだろうけれど、それを許可してもらえる塚本家ってどれだけすごいの?
更なる疑問が浮かび上がる。