ノーチェ


―――頭が回らない。


だけど視界だけはグルグル回って
全てを歪んで見せた。



…あぁ、あたし酔ってるんだ。

だからきっと、幻を見てるんでしょ?




ねぇ、桐生さん。
どうか……、


どうか嘘だと言って。




あたしが愛したのは
あなたじゃない、と。

誰でもいいから、どうかあたしを。




―――薫。





「莉伊、」と呼ばれて
あたしはぼんやりとした意識を隣に移す。



「酔ったのか?顔色悪いぞ。」

優しく頭を撫でて、あたしを労る薫。



「……や…っ!」

ふいに視線を感じて、あたしはその手を払った。



「………莉伊…?」

「…ごめ…、あたし…。」


桐生さんが見てる。




あたしと、薫を。





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