ノーチェ
…運命なんて
もう、信じられない。
あたしは、薫と出会う為に桐生さんに惹かれたのか。
桐生さんに惹かれたのは薫と、出会う為だったのか。
―――傷つけ合う為に出会ったのか。
もう、わからないよ。
「…百合子さんに、謝っておいて。」
声が震える。
だけど、あの場所には戻れない。
知らない方が、幸せだった。
「…じゃあね。」
「莉伊!」
踵を返したあたしに
薫の声が花火にかき消される。
涙が、花火を歪ませて。
夏の風物詩は、あたしをただ悲しくさせた。
―――運命の行方は
どこに、向かっているのか。
誰にも
わからなかった。