ノーチェ
………………
夏が、終わる。
一瞬の花火のように
夏は駆け足で過ぎて。
それが、切なく感じるのはどうしてだろう。
だから夏は苦手だ。
幻のように消えては
また、巡る季節に現われる。
まるで、彼のような
幻の如く。
「莉伊、今日暇?」
「…何で?」
鮮やかな黄色の花をバケツに入れてゆく。
向日葵は夏の人気者。
だけどあたしは好きじゃない。
花なら、薔薇が一番美しい。
そんな事をぼんやりと考えながら、仕入れたばかりの花々をバケツに並べた。
「最近、ACQUA行ってないじゃん。」
隣で同じく仕事をこなす菜月は、少しふてくされたように呟いた。
ACQUA(アクア)とは啓介くんのバーだ。
あたしは何も言わずに
そのまま菜月の言葉に耳を傾ける。