ノーチェ



『…莉伊?俺だけど。』

その声に、ドキンと心臓が跳ねた。



「…どうしたの?」

なんて、今までずっと連絡を待ってたくせに
潮らしいあたし。


チラリと薫に視線を向けると、ポケットから煙草を取り出して火を付けていた。



『今から、平気か?』

「……今から…?」

と問い掛けると、煙草をふかした薫と視線がぶつかる。



『無理なら明日でも構わないけど。』


あたしは不自然に薫から視線を逸し

「…ううん、平気。いつもの場所に行けばいい?」

そう言って罪悪感に目を瞑った。



―『自分削ってまで追い掛ける恋愛に、未来はねぇよ。』

薫の言葉が反芻する。




だけど―――…


「…じゃあ、後でね。」




どうすればいいのか
わからないよ。



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