ノーチェ
その言葉に
微かな光で見えた彼の顔が、こちらに向いてるのがわかった。
「……何を?」
煙を吐き出した後、ゆっくりと口にした桐生さんの言葉に
あたしはベッドの上でシーツを握り締める。
「百合子さんとあたしが…知り合いだって事。」
わかりきった質問をもう一度ハッキリと言わせた彼は
「…知ってたら、会わないだろう。」
そう言って煙草を灰皿に置いた。
「……薫と、あたしが知り合いだって事も?」
間髪を入れずに問い掛ける。
もう夏も終わりだというのに、まだ冷房のかかったホテルで
あたしは小さく肩を震わせた。
事を終えた後にする話じゃない、わかっていたけれど
やっぱり口にせずにはいられなかった。