ノーチェ
約一ヵ月振りに訪れたアクア。
大して日は経ってないのに、何年も来ていなかったように感じてしまうのは
それ程、この場所を恋しく思っていたから。
「……薫は?」
菜月の隣に腰を降ろし、あたしは静かに啓介くんに尋ねた。
いつもは薫が独占しているダーツも、今日は見た事のない人達が勝負し合っている。
「あいつなら、百合子さんの所じゃないかな。」
さも当然かのように答えた啓介くんは、特に気に留める様子もなく蛇口を捻った。
「百合子さん、ってあの綺麗な人?」
その名前に、菜月があたしと啓介くんを交互に見て口を開く。
「何、菜月も知ってるの?」
「うん。だって何度かうちの花屋に来てるよね?」
話を振られて、あたしは頷きながらジントニックを一口飲んだ。