ノーチェ
その日は結局
薫には会えなくて
あたしは彼の過去を抱えたまま家路に着いた。
明日は休みだし
あのまま薫を待っていてもよかったのだが
相変わらず見せつけるようにイチャイチャする菜月と啓介くんから逃げてきたのが本音。
『あいつら自分たちの世界入っちゃって居ずらいんだよ。』
薫も、そんな事を言ってたっけ。
バックを置いて暗闇の中でテレビを付ける。
そんな時、外からバイクの音が聞こえてきた。
…あぁ、下の人が帰って来たのかな。
そう思っていると
床に置いたバックから携帯電話が鳴り響いた。
直感で、慌てて立ち上がりカーテンを開ける。
テレビから漏れるお笑い番組と、鳴り続ける携帯電話が重なった。
―――薫……。
そこに居たのは
やっぱり、薫だった。