ノーチェ
バタン、と勢いよく扉を開けて、あたしは外に出た。
急いで出たから、サンダルがちゃんと履けていない。
それでも
あたしはもつれる足を懸命に動かしてアパートの階段を降りる。
「薫!」
呼び掛けると
彼は耳にあてていた携帯を下ろしてあたしに視線を向けた。
「今お前に電話してた。」
「…知ってる。」
あたしの言葉に
少しだけ笑みをこぼした薫は、静かに携帯を閉じた。
――どうしてだろ。
あんなに避けていた薫を前にすると
情けないくらい、自分の心が浮き出てしまう。
そして気が付いた。
…薫に、会いたかったんだと。
「どうしたの、こんな時間に。」
何だか妙に恥ずかしくてとりあえず言葉を繋ぐあたし。
「…あぁ、」と
呟いた薫はコンビニの袋を差し出して
「ちょっと飲まねぇ?」
そう言った。