ノーチェ



だけど頭よりも先に口が勝手に動いた。


「どこ、行けばいい?」



だってあたしは
桐生さんが好きだから。


例え、彼が抱く為だけにあたしと会いたい、そう言ったとしても
それでももう、構わなかった。


会いたい、抱きたい、そう思う相手があたしであるなら
彼を満たせるならそれでよかったんだ。



彼が満たされれば、あたしのこんな矛盾した感情も消える。


―――そうでしょ?





通話を終えてトイレの個室を出たあたしは

一瞬だけ鏡を見て髪型をチェックすると逸る気持ちを押さえて扉に手を掛けた。



そして菜月達が居るテーブルへ向かおうとしたそんな刹那、


「帰んの?」

と背中から届いた声。



あたしの足がピタリと止まった。




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