ノーチェ


窓を開け、灰皿替わりになる物を探しに台所に向かったあたしに

「…なぁ、」と薫が声を掛けてきた。



「んー?」

台所にあった空のペットボトルに水を汲みながら返事をする。



「彼氏はどんな奴?」

その言葉に、あたしの手が止まった。


だけど不自然にならないように蛇口を締めて

「…何でそんな事聞くの?」

そう言って薫の前にペットボトルを置いた。



それをすぐに灰皿替わりだと理解した薫は
ペットボトルに灰を落とす。


「いや、何となく。」

どんな奴なのかな、と思って。と付け加えた薫は、紫煙の先に居るあたしを見つめた。




「…別に、普通の人。」

出来るだけ、悲しみが外に出ないように薫から視線を逸す。



…桐生さんの話はしたくなかった。




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