ノーチェ
…不思議だ。
薫が笑うと、何だかあたしまで嬉しくて
つい、笑顔がこぼれてしまう。
この関係が、誰と過ごすよりも心地いい。
いつの間に、こんなに
薫を必要としていたのだろう。
「…さてと。」
そう言って立ち上がった薫は
「じゃあ、俺帰るわ。」
よれたジーパンをはたいて、あたしに視線を向ける。
「もう帰るの?」
対して深い意味はなかった。
なのに薫は
「何?もう少し俺と居たい?」
と腰を曲げてあたしを覗き込み、口の端を上げて意地悪く笑う。
「…っ薫!」
カッと熱くなった頬を隠して、薫の太ももを叩くあたし。
「っんと、莉伊ってバカだよなぁ。」
そんなあたしの様子にゲラゲラと笑った薫は
体を伸ばして首を鳴らした。