ノーチェ
薫はすぐにあたしをからかう。
だけどそれが嫌な訳じゃなくて。
桐生さんにも見せた事のない笑顔を何故か薫には晒け出せた。
「俺さ、今仕事探してんだ。」
「え?仕事?」
聞き返したあたしに、煙草を消した薫は
「まぁ、いつまでも啓介に世話してもらう訳にはいかねぇし。」
菜月ちゃんの為にも、と付け加える。
「早いとこ決めて、一人暮らしでもするよ。」
「…そっかぁ。」
…そうだよね。
今のままじゃ、ダメなんだよね。
薫には薫の、みんなにはみんなの生活がある。
わかっているのに
みんながバラバラになるって考えると
寂しい、って思うのはあたしだけだろうか。
何も、会えなくなるって訳じゃないのに。