ノーチェ
「これから二次会でカラオケだって。」
振り返ると
壁に寄り掛かった男があたしへと視線を向けながら言った。
「彼氏の所、行くのか?」
ほのかに灯る明かりの中でもわかるくらい、脱色された茶色い髪。
所々破けたジーパンに
腰からぶら下がるウォレットチェーン。
ジーパンをインしたエンジニアブーツは
履き潰したように傷跡が無数についていた。
「あ、あの…、」と戸惑いながら口にすると
あぁ、と思い出したように彼は笑った。
「俺、塚本 薫。一応合コンメンバーの中に居たんだけど。」
そう言いながら煙草に火を付けて答える。
カオル、と名乗った男は初対面とは思えない程、馴々しい態度で話を振ってきた。
「あんた、彼氏居るのに合コン?」